起き上り小法師。転職と失敗と挑戦。

心構え

第1章 大手企業を退職

太郎は50代にして、約30年勤めた大手の会社を辞めた。

彼は昔から正義感が強く、後輩の面倒見が良く明るく楽しい色がを作り上げていた。

しかし、新しく赴任してきた上司とのトラブルが絶えず、彼は次第に追い詰められていった。

どう見ても、その上司には能力がなかった。

愚かで、性格も悪い。

無茶な指示を出してくるが、その指示の説明もできず、サポートの内容すら理解していなかった。

我慢の限界を迎えた太郎は、ついに声を荒げた。

「なぜ、あなたのような人間が上司なんですか!」

その結果、彼は別の部署へ異動となった。

しかし、新しい部署の仕事は未経験の業務ばかりで、毎日がストレスだった。

耐えきれなくなった太郎は、思い切って会社を辞める決断を下した。

第2章 転職

転職先の会社でも、新しい職種に挑戦したが、持ち前のコミュニケーション能力のおかげで職場の人間関係は良好だった。

だが、給料や休日の条件が合わず、再び退職。

次に彼が選んだのは、中小企業だった。

職場の同僚は皆、自分より若かった。

最初の1か月は何とか仕事についていったが、職場の雰囲気に馴染めず、またもや退職。

若い頃は、転勤が多くて、新しい部署や職場でもうまくやれていた。

だが、50代になった今、定職につけず悩んでいた。

「俺は仕事にこだわりすぎているのか?」

「それとも、職場選びを間違えているのか?」

50代という年齢では、転職も難しい。

結局、太郎は無職になった。

将来と老後への不安が募るばかりだった。

絶望の中、彼は夜空を見上げ、手を合わせた。

「これから、どうすればいいんだ…?」

すると、
自分が変わりたいと心から願うとき現れるというお寺が目の前に出現した。

驚きながらも、太郎はその寺に足を踏み入れ、僧侶に相談した。

第3章 起き上がり起き上がり小法師

「投げられても、すぐに起き上がる小さな人形がある。」

「何度倒されても、
どこへ投げられても、
すぐに起き上がる。

その名は『小法師(こぼし)』。」

「昔からある玩具です。」

「だが、小法師は文句を言わない。」

「どこに置かれても、」
「どこに投げられても、」
「どこで倒されても、」
「すぐに胸を張って起き上がる。」

「堂々と。」

「真っ直ぐに。」

「誇りを持って。」

「なんと格好いい玩具だろうか!」

太郎はじっと僧侶の言葉を噛みしめた。

「太郎さんの本当の敵は、自分自身です。」

「勝ち負けは、己の心が決めるものです。」

「何度でも挑戦すればいい。」

「また立ち上がればいい。」

「すべては、ただの通過点なのだから。」

僧侶の言葉が、太郎の心に深く響いた。

僧侶は続けて言った。

「山は西からでも東からでも登れます」

「自分が方向を変えれば、新しい道はいくらでも開けます」

「逆境もよし」

「順境もよし」

「与えられた境遇を素直に生き抜けばいいんです」

「多少の休憩は良いが、停滞は良くない」

「落ち込むこともあります、ですが、落ち込んだままは良くない。」

「失敗するところで辞めるから失敗に」

「成功するところまで続ければ成功になります」

第4章 再起

僧侶に出会ってからも何度か転職をした。

失敗するたびに、起き上り小法師魂を思い出していた。

そして、やっと自分に合う就職先に辿り着いた。

給料も休日も多くはないが、やりがいを少し感じる仕事だった。

 

太郎は目を閉じ、深く息を吸った。

辛い時に、格好良い起き上り小法師を思い出していた。

 

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