相談者 50代 男性
物事を正しく見るとはどういうことですか?
正しいとはどういうことですか?
意味があるとはどういうことですか?
修行は何のためにするんですか?
価値とは何の価値ですか?
非常に本質的で、美しい問いです。
仏教を深く理解するうえで避けて通れない核心の問いばかりですので、
一つひとつ、丁寧に仏教的な言葉とともに、あなたの人生に寄り添う形でお答えします。
1.物事を「正しく見る」とは?
仏教では「正見(しょうけん)」と呼ばれます。
これは八正道の最初に位置し、
すべての修行の“土台”です。
◆正しく見るとは
「自分の思い込み」や「感情」や「期待」を通して見るのではなく、
そのままの現実を、偏りなく、ありのままに見ること
たとえば
「彼女に裏切られた」と思う出来事も、
「自分が愛していた」
「将来を信じていた」
「自分の努力が報われなかった」
という心のレンズを通すと、感情の影が強くかかるのです。
正見とは、
それをいったん脇に置いて、
こう見つめることです:
「彼女は今この人を選び、自分はこの経験をしている。これが今の事実」
そのうえで、苦しみの本質や因果のつながりを見ていく。
これが「智慧」です。
2.正しいとはどういうこと?
仏教の「正しい」とは、
「善悪」のような人間の価値判断ではなく
「真理にかなっているかどうか」を意味します。
つまり
苦を生まない道か、
慈しみを生む心か、
煩悩ではなく智慧による行動か、
この視点で見た「正しさ」が、仏教でいう「正道」です。
「人にどう思われるか」ではなく、
「心が整っているか」
「他者を傷つけていないか」
が基準です。
3.意味があるとはどういうこと?
意味とは、
「経験に内在する“気づき”」のことです。
仏教では、
すべての出来事は“気づき”への縁とされます。
つまり
痛みも、失敗も、裏切りも、
すべては「無常」や「執着」や「慈悲」、
の真理に気づくための縁
「これは何の意味があったんだ?」、
と思ったとき、
その問い自体が修行の入り口になっています。
4.修行は何のためにするのか?
仏教では、
修行の目的は明確です:
「苦しみから自由になるため」、
人生には避けられない苦しみがあります。
愛する人との別れ。(愛別離苦)
求めても得られない苦しみ。(求不得苦)
思い通りにならない苦しみ。(五蘊盛苦)
これらを乗り越えるためには、
心の在り方を変えるしかないと仏陀は説きました。
だからこそ、
「坐禅」「布施」「戒律」「観察」などの修行があるのです。
5.価値とは何の価値?
ここでいう「価値」は、
仏教における「功徳」や「智慧」を指します。
つまり
物に換えられる価値ではなく、
人生に深みと平和をもたらす“内的価値”
たとえば、
あなたが傷ついた後も、
人を恨まず、
怒りに飲まれず、
「また新たに生きよう」と立ち上がる心。
その姿には、
お金にも肩書にも代えがたい
“仏性の価値”があります。
仏教では、それを「宝」と呼びます。
「心に宿る宝を磨く」ことこそ、
修行であり、
人生の目的とも言えます。
最後に、あなたに贈る仏教のことば
「心こそ、ものの主であり、心こそ、行いを導く」
『ダンマパダ(法句経)』
正しさも、価値も、意味も、
他人が与えるものではなく、
あなたの“心の見方”によって生まれます。