「怒りっぽい性格を直す方法|お坊さんの教えが人生を変えた」

心構え

「怒りっぽい性格を直す方法|お坊さんの教えが人生を変えた」

「短気な私と最後のショートケーキ」

彼女は短気だった。
細かいことで腹を立て、すぐに声を荒げる。

レジで横入りされれば、すぐさま相手を指摘する。
運転中に割り込まれれば、ハンドルを握ってイライラが止まらない。
そんな彼女が、その日もまた怒りに駆られた。

大好きなショートケーキを買うためにケーキ屋へ寄った。
店内には甘い香りが漂い、ショーケースの中には美しいケーキが並んでいた。
彼女の注目は、最後の一つになったショートケーキ。

「よかった、まだある…!」
彼女はそっと手を伸ばした。

その瞬間だった。
横からすっと別の手が伸びる、彼女が掴む寸前のショートケーキを見たのだ。

彼女は即座に怒りが込み上げた。
「私が先に手を伸ばしたのに、何で奪うの?」

勢いよく声を上げて、相手の女性は驚いた顔をしながら言った。
「すみません…でも、家に病気で休んでいる息子がいて、ショートケーキが好物なんです。」

その言葉を聞いた瞬間、彼女の怒りはすっかり冷めた。
息子が病気で寝ている?

たった一つのショートケーキが、
彼女にとっては自分のためのご褒美。
その母親にとっては、愛する子供を励ますための食べ物だったのだ。

ごめんなさい、怒鳴って。」
彼女は頭を下げた。

その後、彼女はどうしても自分の短気な性格を直したいと心から願った。
すると、
心から願うと現れるというお寺が、
彼女の目の前に現れました。
彼女は、お寺の僧侶へ駆け込み、相談をしました。

住職は、穏やかな口調で語り始めました。
「人は、時に自分がなぜ怒るのかすら、分からないものです。」

彼女は黙って耳を澄ました。

「子供の頃は、人に迷惑をかけないようにと、育てられましたのではないですか?」
「その影響で、迷惑をかける人を見ると、正義感から怒りの感情が湧いてくるのでしょう。」
「迷惑をかけないようにと、心がけることは大切なことです。」

「ですが、人は迷惑をかけないと生きていけません。」
「だから、迷惑をかけてしまったら、素直にごめんなさいと謝罪をする。」
「そして、迷惑をかけられたら、お互い様の心を持って、赦す」
と言う、心がまえを養いましょう。

「また、」

「家族と生活する人と独身生活の人では、優先するモノが違う。」
「急いでる人と、急いでいない人では、優先するモノが違う。」
「目標がある人と目標が無い人では、優先順位が違う。」
「理解できている人と理解できていない人では、行動が違う。」
「この社会では、その人の立場にならないと、わからないことがたくさんあります。」

彼女は静かにうなずいた。

「誰かに迷惑をかけられたとき、怒りの感情を抱き続けることは、重りを付けて生活しているようなものです。」
「どうせ、忘れる出来事なら、今すぐ重りをおろして、楽になった方が良い。」

住職は微笑んで続けました。

「天気予報と同じように、他人の行動は予測できません。」
「天気予報が外れて雨になって、少し濡れたぐらいだと思えば、『仕方ない』『まあいいか』と思えてきます。」

彼女はその言葉を胸に刻んだ。

レジで割り込んだとき、車で割り込んだとき、
彼女は「私が正しい」と信じていた。
でも、それは彼女の立場から見た「正しさ」でしかなかった。

人は皆、事情を抱えて生きている。
そのことをほんの少し思い出しただけで、怒りを手放せることもあるのかもしれない。

そして彼女は、帰り道、誰かが道を譲ってくれるのをゆっくり、穏やかな気持ちで歩き始めた。

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